怪獣小説 ラドンの誕生

昭和から平成へ。そして平成も間もなく終わりますが今まで数々の怪獣作品が世に送り出されてきました。そこで人気のある怪獣映画にスポットを当てて歴史を振り返ってみようかと思います。

以下怪獣大戦争より抜粋

 

ラドンの誕生 黒沼健

海外ミステリの抄訳や怪奇実話シリーズで知られる黒沼健の、少年向け怪奇科学小説である。


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東方映画「空の大怪獣ラドン」(監督 本多猪四朗、特技監督 円谷英二)昭和31年12月26日公開、のために原作を提供し、雑誌「中学生の友」昭和31年10月号の別冊附録、「中学生新書5」として黒沼健によって書かれたのがこの「ラドンの誕生」である。

雑誌「近代映画」昭和31年10月号に、「空の大怪獣ラドンはこうして誕生した!」という記事があり、興味深いところを、少し長いが引用してみよう。

「春まだ浅い三月の末頃、鎌倉の海近くにある探偵作家黒沼健氏の門を、二人の男性が叩いた。一人はでっぷり太って堂々たるタイプの東宝プロデューサー田中友幸、他は同社文芸部の松下忠の両氏であった。二人は交々口をそえて、どうしても先生でなければいけないのです。これまで数々の作品を拝読して、先生を除いては、この映画の原作者は考えられないのです」と頼んだ。

日本中に流行語まで生んだ東宝の怪獣映画「ゴジラ」が、アメリカのニューヨークで、驚異的な大当たりを続け、更に伊太利はじめヨーロッパ方面にも上映されようとしている。続いてその続篇である「ゴジラの逆襲」も輸出されることに決まって、「羅生門」「地獄門」以来の日本映画の海外進出は今や最高潮に達しようとしている。そこで「ゴジラ」をしのぐ空想化学映画を制作しようと企画会議で決定した。「ゴジラ」のプロデューサーである田中友幸氏が再び担当することになり、今回は空中を飛べる怪獣を考えようということになった。そこで、探偵作家協会員の中で、モンスターものを得意とする小説家の黒沼健氏に原作を執筆してもらい度いという白刃の矢が立った次第。

それから数週間、黒沼氏は動物図鑑を用いて、空を飛んだ原始動物の中から飛竜の1種で、さながらグライダーの如く、獲物をみつけた時はジェット機のような速さで相手にとびかかるという、学名プテラノドン属のうちラドンという怪物を見つけ出した。このラドンは、原始時代に空中だけでなく水中にも住むことが出来、翼を広げた時の長さ30尺から50尺の大きさで住んでいたが、その卵が孵化しないままで二億年間九州の石炭鉱の地底にあった。

それが水爆実験の影響で気圧が変化し、更に年々地球の温度が昇って来るという所轄地球温暖説に基いて、孵化するに適当な温度と湿度が備わって成長し、遂に阿蘇山の火山口附近から空中に飛び立つ。

ラドン誕生の経緯がよく判る記事だが、これによると映画では主演の佐原健二(河村繁役)が、初期配役では小泉博になっているのが目を引く。

その他、細かい点をビデオ、LDでチェックしてみるのも面白いと思う。

映画「空の大怪獣ラドン」は、東宝特撮初のイーストマン・カラー怪獣映画である。本編と特撮の色彩設計の調和が素晴らしい作品で、円谷英二の特撮も見事な出来栄えだった。最近ではラドンは「ゴジラVSメカゴジラ」に出演しているが、脇役的な扱いがやや寂しい。

尚、黒沼健は「大怪獣バラン」(監督本多猪四郎特技監督円谷英二)昭和33年10月14日公開の原作も担当している(原作の印刷物は無い)。