彼との出会いは2000年まで遡る。
下北沢のアンティークショップで帽子を深くかぶり大きなマスクで顔を覆い真っ赤な上下のジャージ姿だったと記憶している。
目力が弱く酷く咳き込み立ってるのもやっとのようだったが彼の背中から情熱の炎がメラメラ燃えているのを感じた。
わたしは思わず声をかけてしまった。
「アンティーク品がお好きなようですね?」
すると突き刺すような野犬の瞳で私を睨み付けてきた。
「よくもまあこんなチープなガラクタ並べて買うやつの顔が見てみたいよ」
そのまま手に取ったガラクタをレジに持っていったのだ。
合計金額1980円、財布の中身が84円しか入っていないようで肩代わりした。
それから一気に距離が縮み深い話をする仲になったのだが彼は病気に犯されていたのだ。
病名は「スペシャル心臓病」
スペシャルがつくほどの大きな病だ。
心臓から芽が出てやがて、鼻、耳、口、肛門から孔雀のような鮮やかな花が咲き乱れてしまう特殊な病気のようである。
この話を聞いてから約20年ほどの歳月が経ち余命という言葉も忘れかけていのだが、ふと脳裏をかすむようになった。
その間、彼の魂と情熱の込もった作品を何度見てきたことだろう。
今にも燃え尽きてしまうほどの真っ赤でそれでいて青白い炎を発しながら弱々しい背中と命懸けの作品を何度見てきたことだろう。
彼の素敵な作品を紹介できる日が来ることを夢のように思い描いています。
作品名 空と太陽と風邪の又三郎
(桜柄トーカイタペストリー使用)